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2006年 03月 16日
『身毒丸』 (2003年8月に記す)
5年前の夏、生まれて初めて芝居を観た。 蜷川幸雄演出、寺山修司作、舞台『身毒丸』。 それ以前にも、白石加代子さんと武田真治さん共演のものを新聞広告で見た記憶がある。心ひかれたが、芝居見物ってなかなか思い切らないと行けるもんじゃない。 1998年の梅雨頃、前年ロンドン公演で華々しくデビューした天才少年演じる身毒丸が、大阪にやって来るとテレビや新聞で盛んに宣伝していた。 この少年、インタビューに答える姿もかなり天然でユニーク。どんな演技をするのか、気になり、テレビドラマ『凍りつく夏』を見始める。アイドル系はあまり好きじゃないけれど、演技は結構うまい。チケット発売のテレビコマーシャルでは、暗い音楽が流れ一瞬で不思議な世界を浮かび上がらせている。おもしろいかもしれない。よしっ、今度こそ初観劇だ! 公演当日、大阪近鉄劇場前には真夏の強い日ざしの中、中高生らしき女の子達が向日葵の花束を抱えて長蛇の列を作っている。まるでコンサート会場のような雰囲気。 劇場の中は、立ち見の人も溢れていてすごい熱気。独特のにおいがする。赤いじゅうたん、お祝の花々、すべてがまぶしい。私の席は5列目センター。後ろの席の中年の女性が「あの子はロンドンで腰が悪かったのよ、もう大丈夫かしら」と話している。知ってるもんね(なに競ってるんだ)。私の隣の席に、見るからにオカマのおじさんが座る(見ないでおこう)。すーっと暗くなった。いよいよ始まる。 暗闇の中、いきなり舞台の上の方から、火の粉が!こ、こんな事してもいいのか?! あの暗い音楽と共に、舞台奥の方から無気味な人達がゆっくり迫ってくる。舞台から落ちそうなくらいギリギリのところで止まる。自販機を乗せたリヤカーをひく人が一番恐い。背の高い男の人は着物をはだけて中は裸、局部にとんがり帽のようなものをつけているだけの露な恰好。いいのか、こんなもの見せて?有象無象の群れが去ると、奥の暗闇から一人、少年が登場。白いシャツに黒いズボン、白いくつ。胸に当てた手にはカンペ、じゃなくて写真。 身毒丸だ。立ち姿が凛として美しい。ピーンと張りつめた空気が澄み切った瞬間、 最初のせりふ。 まなざしの おちゆくかなた ひらひらと 蝶になりゆく母のまぼろし ああ、いい声。テレビとは全く違う。かすれながらも透き通り、はかなげな響きのなかに、心に突き刺さる芯の強さを含んでいる。耳も頭も通さずに、直接、胸につきささる。まっすぐ伸びた細い体から身毒丸の苦しみが滲みでて、柳のようにしなっている。 空気の棚に桜の花びらをそっとのせてゆくように、心細げに、しかしくっきりと噛みしめながら声にする。私は一瞬にして異次元の世界へ連れてゆかれ、共にさまよっていた。 母を買うシーン。継母となる撫子がつけている仮面には、母という漢字一文字。 シンプルだが強い記号。 家路につくシーン。身毒の不安げなうしろ姿が美しい。肩幅があるのに細いわき腹のライン。ずっと見ていたい。 芝居が始まって15分頃、行水のシーン。いさぎよくて、いやらしさはない。 舞台中央で独り言をいう撫子の目を通して見ると、せつない色気を感じる。 家族合わせのシーン。独り無視され混乱した身毒は、不安げに母札を抱えたまま、あっという間に上段へと駆け上がり、札をバラまく。「母札なら僕が持っている」 せつなさが宙を舞う。 場面の転換では、芝居の流れをとめる事なく、舞台装置が目の前で入れ替わる。舞台の連続性を保ちながら、時間と空間がうまい具合に移り変わってゆく。 暗転の後、小さなビンの中に入れた髪切虫を、愛おしそうに眺める身毒。 舞台中央前の方で、うつぶせに寝転びながら、両足をバタバタさせたり、首をかしげたり仰向けになったり。子供っぽいしくさで、しかもうっとりとした色っぽい目つきでビンを眺める。そこへ、撫子がそっと忍び寄る。このあたりから白石さんの凄みが増してくる。身毒のズボンを下ろし、お尻をぶつ撫子。 かごめかごめで、にせの母親たちに囲まれて苦しむ身毒。 ハスキーな声が、よけいかすれて苦しそうに叫ぶ。 ぼとんぼとんと落ちてくる赤い塊は、牡丹の首か。地獄が流す血か肉か。 わら人形のシーン。バンバンバンッと両手を広げて苦しみ倒れこむ。その時、私は、上の方から降ってくる白い紙のうちの一つに仕込んだ血のりを、倒れた藤原さんが、こっそり顔に塗り付けているのを見てしまった。それなのに、振り向いた身毒が目から真っ赤な血を流しているのを見て、びっくりしてしまう。 現実と虚構の世界、私はどこにいるんだろう。 そのあとのシーンは何よりもおぞましく、思わず目をそらせてしまった。弟せんさくを殺すシーン。(この子役がとても古風でいい雰囲気を持っていた) あれ程か弱かった身毒が、妖しい色気を放ちながら、純朴そうな弟をなぶり殺す。 一体、何が身毒を変えたのか。激しい怒りと悲しみが、観るものを圧倒する。 ラストシーン。「お母さん!もう一度、ぼくをにんしんしてください!」 そのせりふに、私の近くにいた若い女の子達が笑った。何故!! 笑い声に反応されたのか、白石さんは藤原さんのシャツをグッと開くところをやめてしまった。(このシーン、テレビコマーシャルで見ていた) 舞台は、役者と観客が一緒に作り上げるものだと、その時知った。 俳優藤原竜也さんがデビューしたこの舞台を、ナマで観られたことは、本当に幸運だった。当時は、言葉に出来ない程、圧倒されていた。あれから8年、少しづつ記憶はあいまいになってゆくが、こんな芝居があったのか、こんな人が同じ時代を生きているのか、という驚きと喜びは、今も体の底から熱くわき上がってくる。 (のちの2002年2月に観た身毒丸ファイナルについては、また後で載せてゆきます。)
by shintoku0
| 2006-03-16 14:34
| 藤原竜也 舞台
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