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2006年 03月 18日
『大正四谷怪談』
1999年11月大阪初日、420席の小劇場は期待に溢れていた。 場内が暗くなり、静まりかえった瞬間、最前列真ん中の席にいた私の目の前にスポットライトをあびた伊右衛門が立っている。くっくっと強く息を吐きながら、足の指が曲がるほど力を入れて、一人踊る。腰骨の線がくっきりと見える薄い衣装が、細い体にまとわりつくようにさらさらと音を立てて動く。足の裏のホクロ発見。ライトが目に痛い。役者はこんなきついライトを浴びているのか。目の前の現実にとらわれ、なかなか芝居に入り込めない。「今夜の相手になりたいかい。」と客席にむかって語りかけるせりふが、頭の上を通り過ぎてゆく。 舞台上には、大きな破れがさを広げたようなセットの前に3本の柱があるだけ。4人の出演者は、代わる代わる舞台のそでではなく柱のうしろに引っ込む。伊右衛門役の藤原竜也さんも、出番じゃないときには柱の後ろで背筋をピンと伸ばし、前をじっと見据えて座っている。ずっとその姿を見ていられるのはうれしいが、役者にとっては、汗もふけず水も飲めない、緊張を強いられる疲れる舞台だ。 小道具には、新聞紙が色々な形で使われていた。非常に観念的で抽象化された舞台の上で、現実の最たるものである新聞紙を使う難しさ。新聞を読むシーンで使われていても違和感はない。だが同じ芝居の流れの中で、新聞紙を切ったものをお金として使い、「半分もらっておくぜ」と言ってちぎってみせる。観ている方は混乱し、稽古場にいるような現実感を味わう。芝居の中に入り込み、虚構の世界を彷徨うことは許されないのか。演出家の思いが一人歩きしていた。 ラストシーンは『せりふの時代』に載っていたシナリオとは違う展開になっていた。 あらかじめ読んで、舞台のイメージを膨らませ過ぎていた私は唖然とする。先に読んだシナリオでは、伊右衛門と直助の二人が刀をかまえた瞬間、地面が揺れ、刀を取り落とした直助が「逃げて下さい、伊右衛門様」と叫ぶ。伊右衛門は哄笑して、またジルバを踊り始める。「揺れろ、おれの大正」と叫んで。関東大震災で伊右衛門が死に、大正が終わる。ラストシーンは美しい。現実世界の恋をはたした直助とお袖。その視線の先に、虚構を生きた伊右衛門とお岩が抱き合って口づけをしているのだ。 しかし、舞台で演じられたものは違っていた。直助が伊右衛門を刺し殺してしまう。そして、最後は唐突に伊右衛門が、客席にむかって土下座して終わる。 2003年6月に、この戯曲を書いた岸田理生さんが死んだ(身毒丸の脚本家でもある)。あの17場面とラスト18場面、岸田さんは納得していたのだろうか。 私は、生で観た芝居を後から映像で見ていない。だから5年前の記憶に間違いがあるかもしれないのだが、あの時、確かに客席には「あれっ?」という妙な空気が流れた。もちろん藤原さんの演技は完璧だった。ご自身も納得のゆくできだったようで、とてもいい笑顔でカーテンコールに出てこられたが、どうも客席の拍手に熱がこもっていない。客電がつくと、「あれ違ったね」「変な終わり方」という声も聞こえた。 無理やり完結させる必要がはたしてあったのだろうか。俳優たちには、あの妙な空気の原因はわからなかっただろう。その熱演に対して、もっと素直に拍手すればよかった。 思いを引きずったまま、一週間後の中日、同じ席でもう一度観た。 初日に比べると若干できは良くなかったが、カーテンコールでは客席から「竜也!」のかけ声と大きな拍手。固い表情で出てきた藤原さんは困惑顔。芝居の出来と観客の反応は、必ずしも正比例しているとは限らない。そういう私も、初日の分を取り戻そうと大きく拍手していた。熱狂的なスタンディングオヴェーションにもかかわらず、この日もカーテンコールは一回だけ。それ程、心身共に消耗する舞台だったのだろう。 芝居の途中に舞台上から私の足もとに落ちてきた新聞紙が、いつのまにか消えていた。その時私は、先のシナリオから解き放され、美しい伊右衛門に酔いしれている自分に気づく。 あれから5年。記憶は断片的になってゆくが、17才の伊右衛門は、長い黒髪を揺らしながら、私の中で今も踊りつづけている。 (2004年11月に記す)
by shintoku0
| 2006-03-18 10:31
| 藤原竜也 舞台
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Comments(4)
はじめまして、Yori's home、管理人のYoriです。先日は当サイトに遊びに来て下さってありがとうございました。リニューアル中でコンテンツなくてごめんなさい(涙)明日には再オープンしますのでよろしければまたサイト/BBSのほうにも遊びにいらしてくださいね^^
熱いレポ、興味深く拝読しました。私は大正四谷怪談はDVDでしか観ていないのですがその当時の舞台の様子が垣間見れたような気がしてとても嬉しくなりました。そして竜也さんのデビュー当時の身毒丸をご覧になられたなんて素敵ですわ。 貴重なレポを有難う御座いました*^^*
Yoriさん、ありがとう!はじめてのお客さまですワ♪慣れないもので、自分でココにコメントしていいのかどうかもわからないんですが、うれしいです。Yoriさんのブログを見て私もこのブログをはじめました。サイトのほうは2年前から毎日のように拝見していました。リニューアルおめでとうございます。また遊びに行かせて頂きます、ありがとう。
003の母さん、こんばんは。
「今日も今日とて藤原竜也」の涼子です。 先日はご訪問いただき、ありがとうございました♪ 「大正四谷会談」、観劇されたんですね〜 大好きな作品です。 あのダンスを生で観たかったナ〜 わたしの観劇は「エレファント・マン」からなので、とってもうらやましいです。
Commented
by
003の母
at 2006-03-27 09:43
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涼子さん、こんにちは。
こちらこそ、来て頂いてありがとうございます♪ ブログに来て下さった方とこんな風にお話しできるなんて、ホントにうれしいです。 エレファントマンは3回観たんですが、ちょっと辛口の文を書いているので、ここに載せていいものかどうか迷っています。 ライフは5月までおあずけです。泊まり掛けで観劇される涼子さんがうらやましいです。またお話聞かせて下さいネ。 これからもよろしく♪
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