きたないはきれい。1999年1月25日(月)夜10時よみうりテレビ。犯罪心理捜査ファイル『ボーダー』第3回・美少年に死の接吻を・に藤原竜也さんがゲスト出演。永遠の若さと美への信奉から、愛する少年と自らの命をも危めようとする美少年役。
倒錯した美学が、怪しげな世界を通して語られる。一つ間違えれば俗悪なものになりかねない話だが、彼の美しさと演技力が見るものを耽美な世界へと誘う。
このドラマ、藤原さんのシーンは何度も見直しているが、今日は最初から最後まで見てみた。
若く美しいまま死にたいと願う少年・雅彦(藤原さん)、その少年を愛し願いを叶えようとする医師(宇梶剛士)、過去のトラウマに悩む主人公の女性捜査官(中森明菜)と、死んだらただの物になって土に帰るだけだと言う同僚の捜査官(筒井道隆)。死に対して各々違う考えを持つ登場人物からなる。筒井さんは、2001年3月に観た『恋愛戯曲』では足の虫刺され痕ばかり目について印象が浅かったが、その飄々とした融通のきかない存在が、この捻くれたドラマの中では新鮮でとても生かされている。彼の演技が、複雑な心理を表現する藤原さんの演技を引き立てていて分かりやすい。藤原さんは、こんなドラマでそこまでやらなくても、という程、熱演している。そして、何より、美しい。
ランボオの詩集『地獄の季節』を閉じて顔を上げた雅彦の、ゾクッとする程冷たい表情。手に持ったレモンさえもひんやりとして瑞々しい。無表情なまま医師に抱きしめられた後、睡眠薬を飲もうとして鏡を睨み付ける鋭い目。けだるそうに、病室の窓から差す光にそっと目を閉じる。中原中也の、汚れちまった悲しみに、を連想した。夕陽に染まる病室での中森さんとの会話
「中世の絵画に描かれている神様の姿は青年です。後は崩れてゆくだけです。心も、体も。なんでこんな世の中になったか分かりますか。人が長生きするからですよ。楽になりましょうよ」
まるで凍りつく夏の裕介が義母に語った時のように、無気味に微笑む。そしてクライマックス。「ぼくがきれいじゃない・・そんな・・そんな事あるもんか」
身毒丸を思い出させる激しさで、怒り、きれいな涙がこぼれ落ちる。
ああ、やっぱり藤原さんばかり見てしまった。
いくら16才の美しい藤原さんでも、死体を美しいと思う人がいるだろうか。
シワシワになっても渋い演技をする90才の藤原さんを観てみたい。
死んだらおしまい。よく生きよう。私は250才まで生きたい。
きれいはきたない。きたないはきれい。
藤原さんなら何才までって言われるだろう・・・
録画テープでボーダーが終わりかけた瞬間、さんま御殿が入っていた。この落差。
「ねえ、さんまさん。アルマゲドンの話しましょうよ」傍若無人の像。諸行無常